山口大学医学部附属病院 C棟外来診療棟・C棟新中央診療棟渡り廊下
病院の顔となるメインエントランスからエスカレーターホールへ。アートワークのコンセプト「再生」にふさわしい新鮮なエネルギーが常に流れ込む空間を創り出します。
Task プロジェクトの課題
多くの人びとが最初に訪れるエントランスホールは病院の顔として、高く吹き抜ける空間を活用して、生き生きとしたウェルカミングな空間を提供することが第一に求められた。またそこから続くエスカレーターホールや渡り廊下では、それぞれの目的地に人びとを優しく誘う、リズム感溢れる誘導性が求められた。
Solution アートプレイスの提案
アートワークの全体コンセプトである「再生」を表現して、エントランスから常に佳い「気」、新鮮な「エネルギー」が流れ込み、病院を訪れる人びとの心身に再び生きる力や希望を届け、ポジティブな変化や未来への循環を創り出すアートワークを設置。エントランスホールには、同一作家による大型の吊り作品とガラスシート作品によって、吹き抜け空間にダイナミックで軽やかな「動き」や透明感ある光の変化が表現され、来院者を温かく迎える統一感ある「おもてなし」空間が実現した。 続くエスカレーターホールでは、閉鎖的になりがちな空間を明るく、ポップな立体レリーフがエスカレーターの動きと連動して、人びとを上階へと心地よく導く空間とした。また渡り廊下には、山口の景観を抽象的に結びつけた仮想世界をモチーフにしたデジタルアートを展開し、歩く人の速度に合わせて景色がゆるやかに移り変わる仕掛けを組み込むことで、まるで車窓から外の風景を眺めるような体験を提供している。リズム感のある誘導性と、地域性を感じられる温かみを両立した空間となった。
Works 作品
吊り彫刻|《ときをつなぐたね》|《 Seeds of Time 》|C棟外来診療棟 1F外来エントランス 天井
世界には、植物の数だけ多様な種がある。
種はプロペラのように飛んだり、動物の毛や人の衣服を介して新天地をめざし、生命の源となり未来へ記憶をつなげている。その循環の中に私たちも存在している。
本作は、「桐の種」をメインとして、作家自身が切り出した世界中の種子や木の実のフォルムが集まって螺旋を描き、小さな種が秘める大きな生きる力と、生命の不思議や希望を表現している。その全てが一体となり、大きなエネルギーが時空を巡りながら、再生と循環を象徴する。
小さな種たちは、生命の力をぎゅっと抱え、風に乗り、光にふれて芽吹き、種を残して大地へと還る。
その循環は、過去と未来、個と全体、生命と記憶をつなげていく。
自然の営みに耳をすませ、光や風、私たち、一つひとつの小さな存在が、時を越え世界をつなげていることを感じてほしい。
本作が、この場所へ常に新鮮なエネルギーをもたらし、ダイナミックな「動き」や「光」に満ちた空間を創り出すことを願っている。
《ときをつなぐたね》|《 Seeds of Time 》
2025
ワーロンシート、塗料、ワイヤー、ステンレス
壁面アート|《ひかりひらくかぜ》|《 Wind of Light 》|C棟外来診療棟 1F外来エントランス カーテンウォール
桐は、古くから縁起の良い木とされ、家具などの材料としてもよく使われている。成長が早い木で、大きな葉を広げながら、幹は真っ直ぐに空へと伸びていく。わずか1年でおよそ3メートルも高くなることがあり、その力強い成長は、米粒よりも小さな種の姿から想像もできないほどで、自然の持つ内なるエネルギーに驚かされる。本作は、そんな桐の種をモチーフにした作品。小さな種が持つ無限の可能性を表現した。
桐の実の中にはフリルのような翼がついた小さな種子が、たくさん詰まっている。果実の先が割れると、風がその隙間に吹き込み、花びらのような種が空中に舞い上がる。太陽の光を受けてきらめきながら新しい世界へと飛び出す姿は、未来をひらく予感、希望を示している。
朝から夜、春から冬へと変化する時間や季節の移ろいの中で、作品がこの場所に、常に変化する新鮮な光と生命感あふれるエネルギーを吹き込んでくれるよう願っている。
《ひかりひらくかぜ》|《 Wind of Light 》
2025
ガラスフィルムシートに印刷
レリーフアート|《 Gradation Forms -めぐる花々- 》|C棟外来診療棟 1F-3Fエスカレーター
花が咲くまでには幾度となく様々な変化が繰り返される。種子が発芽し、根や茎、葉が成長し、花芽が作られ、適切な環境が整ったときにようやく花が咲く。
その過程には無駄がなく、またその循環に終わりはない。
人間の生も花の生の循環と同様で、生のための純粋な過程はとても力強く美しいものだと思う。本作にはそのような生き物が生きる力強さや絶えず循環するフレッシュなイメージが込められている。
また、22点ある本作の中には同じ輪郭がいくつかあるが、よく見ると少しずつ形が違う。これも一つとして同じものはない私たち生き物の姿を重ねている。同じものだと思っていても見る角度や時間帯、そのときの自分の心境によって違ったものに見えるかもしれない。ほんの少しずつどれも違って、その違いを見つけていくことはささやかだがとても楽しいことだと思う。
本作が観る方にとって少し元気が出たり、束の間の楽しい時間になることを願っている。
《 Gradation Forms -めぐる花々- 》
2025
アクリル、水性樹脂、押出発泡ポリスチレン
デジタルアート|《景譜》 | 《 Transit Notation 》|C棟新中央診療棟 2F 渡り廊下
CGにおけるレンダリングやモデリングのアルゴリズムを主要な制作道具とした作品づくりを得意とするデジタルアーティスト。
4連のディスプレイを窓に見立て、車窓から外を眺めるように仮想の世界を体験する。そこに広がる風景は、山口の景観と抽象的に結びつきながら、地形の変化や季節の移ろいを映し出している。朝・昼・晩の時間とともに 、光や色彩も変化していく。景観はアルゴリズムによって生成され、車窓から眺める風景を多様に描き出しながら、観る人びとを創造の世界に誘い、歩く人の視線や移動のリズムとともに移り変わる。
《景譜》 | 《 Transit Notation 》
2025
デジタルアート
| 事業主 | 国立大学法人 山口大学医学部附属病院 |
| 所在地 | 山口県宇部市南小串1丁目1-1 |
| 設計デザイン | 山口大学施設環境部+株式会社 佐藤総合計画 |
| アーティスト | 早崎真奈美, 高橋美衣, 永松歩 |
| 撮影 | 表恒匡 |
| アートディレクション | ArtPlace Inc. |


















