再生、生きる力、エネルギー、命の循環を表現する多彩なアートワークが、医療施設の「おもてなしの心」を発信します。
Task プロジェクトの課題
山口県を代表する医療・研究施設である山口大学医学部附属病院の再開発事業にともない、多くの病棟が複雑に結びつく構成のなかで、各場所や動線の視認性を高め、建物に新たな息吹を吹き込む活力に満ちた空間づくりをおこなうことで、病院の「おもてなしの心」を発信するアートワークのあり方が求められた。
Solution アートプレイスの提案
アートワークの全体キーワードは、再開発事業であること、そして命を守る施設であることからも、「再生」とし、来訪者に再び生きる力、希望、エネルギーを与えるような多彩な作品群を設置。メインロビーや渡り廊下周辺、エントランスホール、エスカレーターホールなど、各棟を結びつけ、多くの人びとが行き交う場所に、場所の特性を際立たせ、人びとの動きを誘導するストーリー性あふれるアートを展開している。また、地域と連携を結ぶ機会として山口情報芸術センター[YCAM]との協働を図ったデジタルアートや、山口にゆかりのあるアーティストによる作品などが、病棟や外来に引き続き納品される予定である。
Works 作品
レリーフアート《ナツミカンの木》|C棟新中央診療棟 2F 廊下
山口県の県の花である「夏みかんの花」をモチーフに、豊かに育つ植物の未来につながるエネルギー、成長、再生を表現した。丸みを帯びた大小4点の変型パネルはそれぞれ花びら、つぼみ、果実や葉などをイメージで構成され、L字壁という特徴ある空間と一体化している。塗料をハンドペインティングするという独特な手法で描かれた作品群は、色彩が手の動きとともにダイナミックに混じり合い、活き活きとした印象に残る場所づくりに成功している。本作品は病棟と診療棟2階の結節点に設置され、人びとの動きを誘導するアイキャッチとしての役割も果たしている。
《ナツミカンの木》
2023
ペンキ, 変形パネル
デジタルアート《Daily Codes [365++]》|C棟 新中央診療棟1F クロスラウンジ
本作は1 年365 日間を通して、日々変化するグラフィックにより構成されている。 これらのグラフィックは、作家自身によって365日分プログラミングされ、コンピューターを通じて計算、実行してディスプレイ上に描かれるという「ジェネラティブ・アート」の表現手法で制作された。テーマは「再生・光・エネルギー・成長」であり、地域の風景や自然物の有機的な印象とコンピューターによる幾何学パターンの融合がめざされた。毎月4日は山口県の観光名所がモチーフになっており、祝日祭日にはスペシャルなイメージが登場する。また毎日正午に1年分のグラフィックが 1 分間表示される。本作品は診療棟と病棟を結ぶフォーカルポイントである「クロスラウンジ」の柱と一体化してモニター2面で展開され、日々変化するグラフィックは行き交う人びとに時間や季節の移り変わりを感じさせている。なお、本作は山口情報芸術センター[YCAM]との協力により制作された。
《Daily Codes [365++]》
2023
デジタルアート
《動き出す》640枚の絵でつくる10点のタングラム|C棟新中央診療棟 廊下
本作は、もともとは2016年の病院再開発整備事業の際に、病院の未来への期待を込めて、B棟1F廊下に、患者さん、ご家族の方々、病院スタッフとアーティストによる協働を通じて制作された作品である。
タングラムとは、正方形を7つのピースに分割し、そのピースを組み合わせて形をつくるパズルを指す。ピースはワークショップ参加者が作成した、色とりどりのタイルによって彩られた。今回、B棟とC棟の改修工事にともない、形が組み替えられ、新たな作品として生まれ変わった。山口の風景から触発された本作品は、跳ねるうさぎ、舞う蝶や鳥、動き出す船、楽しそうに行き来する人々など、多彩なモチーフをリズミカルに配置し、動き出す力や無限の可能性を感じさせダイナミックな躍動感を空間に与えている。
《動き出す》640枚の絵でつくる10点のタングラム
2016-2023
サイズ|可変
MDFにガッシュ, アクリルメディウム, 木, 合板
事業主 | 国立大学法人 山口大学医学部附属病院 |
所在地 | 山口県宇部市南小串1丁目1-1 |
アーティスト | 木下友梨香, 石井栄一, 末永史尚 |
協力 | 山口情報芸術センター [YCAM] |
撮影 | 谷 康弘 |
Art Direction | ArtPlace Inc. |