本社リニューアルに伴い製造廃材を用いたアートを導入。企業のサスティナブルな社会の実現に向けて貢献する姿勢をアートを通じて発信します
Task プロジェクトの課題
積水化学工業株式会社は、持続可能な社会の実現に向け、廃棄物削減とリサイクルに取り組んでいる。本社リニューアルにおいても、環境への姿勢を可視化し、社員や来訪者にその理念をアートを通じて伝えることが求められた。
アート作品が設置されている2階のエントランスと会議室には、同社の社名の由来である孫子の兵法にある「積水」の概念を体現し、フロアコンセプトである「水の循環」をテーマに、企業メッセージを強く印象付ける空間を創ることが課題となった。
さらに、アートの素材として製造工程で生まれる廃材を活用し、同社が積み重ねてきた技術とサスティナブルな未来へのビジョンをテーマにしたアートが求められた。
Solution アートプレイスの提案
この課題に対し、私たちはアーティストとともに同社の国内3カ所の工場へ足を運び、廃材の選定から始めた。工場ごとに異なる素材の特性を活かし、それぞれの質感を作品に組み込むことで、同社が積み重ねてきた技術とサスティナブルな未来へのビジョンをアートとして表現した。
エントランスには、滝をモチーフとしたTAKU NISHIMURAによる立体作品を設置。選定した廃材を組み合わせ、力強く流れ落ちる水のエネルギーを表現。滝が周囲に清らかな空気を生むように、この作品が訪れる人びとにインスピレーションを与える存在になることを目指した。
一方、会議室には、廃材とともに織り上げた布を積み重ねたレリーフ作品を河本蓮大朗が制作。《水の花》として形作られたこの作品は、長い時間をかけて循環し続ける水の営みと、そこから生まれる新たな対話や発想を象徴している。
単なる「リサイクル」ではなく、素材に新たな価値を与え、未来へとつなげる。その思想を可視化したアート作品が、企業のメッセージを伝え、持続可能な未来への意識を促す場の創出となることを願っている。
Works 作品
立体作品 | 《水のかたち 力のすがた》|エントランスカウンター
古代中国の思想家・孫武の作とされる『孫子』には「積水」に関する一節の記載があり、「積水化学工業」の由来となっている。その由来から着想を得て、本作は「滝」をイメージした作品である。
廃棄物を透明樹脂で封入した7本の角柱を円形に配置し、滝の奔流の様を表現している。
製品を生産・加工する過程で生まれる廃棄物を、ユニークな素材と捉え作品へ転用し、製品であるかないかの価値基準ではなく、現代社会における素晴らしい資源であることを示唆している。
それは滝の勢いの強さの反面、舞い上がる水しぶきが自然と相まって澄んだ空気を放ち、周囲の人びとに晴れやかな心地をもたらすように、廃棄物にも別の側面があることを重ね合わせる作家の視点が表れている。
《水のかたち 力のすがた》
2025
廃材, ポリエステル樹脂
H900×W750×D750mm
レリーフ作品 | 《水の花》 |会議室
本作では、「循環」をテーマに、地球や生命の誕生から何十億年と循環してきた自然、なかでも水に焦点を当てている。また、作品に廃棄物を用いることで、資源として新たな可能性を見出している。
私たちの生活において、水が最も身近で必要不可欠な存在であるように、製品を生産する際に必ず発生してしまう廃棄物もまた、私たちの生活を支える上で必要なものであることの現れでもある。
作家はより大きな視点を持ち、地球の歴史や流れ、循環を感じる水に、自作の織物を重ね見ている。
「話に花が咲く」というように、廃棄物を別のものへと転用し、新しい資源として活用する未来、さらには地球の未来など、未来を創造するためのコミュニケーションの花が咲く場所になってほしいという作家の願いが込められている。
《水の花》
2025
廃材, 糸
H1000×W3120mm(設置壁面サイズ)
事業主 | 積水化学工業株式会社 |
所在地 | 大阪府大阪市北区西天満2丁目4番4号 |
設計デザイン | 株式会社スペース |
アーティスト | TAKU NISHIMURA、河本蓮大朗 |
撮影 | 表恒匡写真撮影 |
アートディレクション | アートプレイス株式会社 |