あんしん財団の若手アーティスト支援企画展5期がはじまりました
中小企業の働く人・環境を支えている一般財団法人あんしん財団が、2022年8月に新宿のミライナタワーに新しくオフィスを移転。財団は災害防止活動を促進し、福利厚生事業を実施し、中小企業の健全な発展と福祉の増進に寄与することを目的に、さまざまな中小企業が安心して働ける労働環境づくりを展開するほか、未来につながる社会貢献活動を行っている。このプロジェクトは、オフィス空間でのアート企画展を通じて職員のウェルビーング向上を目指すと共に、若手アーティストに発表の機会を提供していくことが目的である。
5期目となった今回は、エントランスに城愛音、職員エントランスには藤原葵による鮮やかな絵画作品が、役員会議室に山本雄基の抽象作品、そしてエントランスロビーには、外山和洋の金工の溶射技法による現代工芸作品が展示される運びとなった。今期は「総力戦」をテーマに設定し、全作品の選定を、あんしん財団の職員の方々が主体的に行なった。アートプレイスはその過程において、職員有志対象に、恒例の現代美術の展覧会をめぐるアートツアーのみならず藝術大学・美術大学の卒業制作展視察を実施し、芸術鑑賞の幅を拡げた。優良な若手アーティストの作品を紹介し作品のキュレーションをサポートし、選定作品の展示までをマネジメントした。
第1期展示(2022年)リンク
第2期展示(2023年)リンク
第3期展示(2024年)リンク
第4期展示(2025年)リンク
Works 作品
《 クロノスタシス 》|エントランス
親しい身近な人物の瞬間を切り取り、鮮やかな色彩で幻想的なイメージを表現。筆のタッチのなかに浮かぶ人を画中に描くことによって、金属的な煌きのなかへ引き込むように絵画そのものの表情を変化させ、鑑賞者の想像力を導く。疾走、焦燥、軽やかさを感じながら絵画の浮遊感を探り、「その時」に感じた印象を思い出しながら、一つずつグラデーションに置き換えている。ストロークの重なりが画面内を流動し、光をとらえたように輝きを放つ。クロノスタシス (Chronostasis)とは、目を素早く動かした(サッカード)直後に見た最初の映像が、実際よりも長く続いて見える錯覚のことを指す。絵の中の人と過ごした時間に「今」を重ねながら、不可視な「時間」の流れを絵画に留めようとしている。
《クロノスタシス》
2024
キャンバスに油彩, アクリル
1,303×1,940mm (F120)
《Biophilia; Bolide》|エントランスロビー
外山の作品は、自然への賛美と生命の循環を表現しており、生物の体内から建造物に至るまで多様に存在する金属そのものがインスピレーションの源となっている。制作方法として、溶射という工業技術を転用しており、金属板を溶かし液状になった金属をエアーで吹き付け造形している。この「金属板を溶かして形を失くし、新たな形に再構成する」という工程を、「肉体が土に返り形を失くし、その土から新たな命が芽吹く」という生命の循環に見立て制作している。冷たく硬い金属が分解され、温かく有機的な形に再構成される様子は、エネルギーや生命の循環と変わりない現象に思えるからである。シリーズ名のバイオフィリアは、社会生物学者のE.O.ウィルソンが提唱した、「bio:生命・自然」と「philia:愛・親和」を合わせた造語で、「生命や自然を愛する本能」を意味している。外山はこの考えに共感し、2019年からひとつのシリーズとして制作している。本作は、五大元素のひとつである「火」をモチーフにし、天文用語の「火球」を意味するボーライドをサブタイトルにしている。
《Biophilia; Bolide》
2021
銅, 金箔, アルミニウム, ステンレス
H500×W500×D500mm
《 Untitled(+RCDS) 》 (3点とも) |役員会議室
山本は重層的な透明層のなかで、円を複雑に交錯させた抽象絵画を描く。カラフルでありながらそっけない匿名的記号として円を用いることで、多様な事柄や感情を代入できる構造を持たせつつ、透明/不透明、見える/見えないといった物事のあいだや、階層や距離を飛び越えた円と円の関係を表出させている。自身の生み出す抽象性に外的要因を取り入れるための実践のひとつとして、プログラマーとの協働により独自に開発・導入した乱数による描画PCアプリ「Random Circle Drawing System(RCDS)」では、自作の構成ルールに基づき円の構成や配色が無数に自動生成され、その中から作家自らの感覚で「選ぶ」ことで作品が成立する。構図や色彩といった本来作家の感覚に基づく選択を一度手放し、再びそこから選ぶという二重の選択構造は、作者性や表現の主体についての新たな問いを導き出す。そして円形の重なりが時代の価値観を飛び越え、意識の外側や、新しい普遍へ向かうことを願いながら制作している。
《Untitled (+RCDS)》
2024(左), 2025(中央, 右)
キャンバスにアクリル
φ470mm×2点, 800×800mm
《FLAME》|職員エントランス
藤原はアニメ、マンガ、ゲームに見られる視覚効果を現代絵画の文脈に取り込み再構築する手法で知られます。英国留学中には借り物の文化ではなく自らのルーツに根ざした対象を描くよう助言され、日本の映像文化における印象的なエフェクト表現を参照しながら、多様な「爆発」の表現を描き始める。爆発、光、炎、崩壊をテーマに、誰もが見覚えのある形や模様を伝統的な絵画技法と同等に扱い、新たな美学の可能性を探る。また、日本の伝統工芸技法や素材への関心から、多様な素材を用いたミクストメディアと呼ばれる混合技法で制作。その背景に、震災経験や世界的なパンデミック、戦争など予測不可能な瞬間や未来への期待を光や爆発の描写に照らして、希望や祈りの輝きとして描き出し、現代社会の状況を鮮やかに表現する。目に見えない内面や感覚をエフェクトを通じて具体化し、視覚芸術の新たな次元を切り拓き、本作では炎の形を抽象的な色や形に置き換えてキラキラと輝く素材を用いて表現している。
《FLAME》
2020
キャンバスにアクリル, 油彩, グリッター
H910×W727mm(F30)
| 事業主 | 一般財団法人 あんしん財団 |
| 所在地 | 東京都新宿区新宿4-1-6 JR新宿ミライナタワー21F |
| 設計デザイン | 株式会社イトーキ |
| アーティスト | 城愛音・外山和洋・山本雄基・藤原葵 |
| 撮影 | 木村雅章 |
| アートディレクション | ArtPlace Inc. |










